熊本地震で2000年基準の新耐震木造住宅 なぜ倒壊?広いリビングの耐震性は?
熊本地震では、2度の震度7の揺れを観測して、
1回目の震度7では持ちこたえていた住宅も、
2回目の震度7で倒壊してしまった家があります。
倒壊率と築年数との関連は高いことが分かっていてます。
1995年の阪神大震災を受けて、2000年6月以降の住宅については
耐震基準に修正が加わったからです。
熊本地震においても、最新の新耐震基準(2000年以降に建築された2000年基準)
を満たす住宅の倒壊率は低いという結果が出ています。
今後、木造住宅を中古で購入するときは、
予算が許すなら、2000年基準を満たすものを
選ぶということは大切です。
一方で、2000年基準を満たしながらも、
熊本地震で7棟の木造住宅が倒壊しています。
なぜ、2000年基準を満たす新耐震基準の木造住宅は
倒壊したのでしょうか?
広いリビングも耐震性と両立が難しいので注意が必要です。
NHKスペシャルで2000年基準の新耐震木造住宅の熊本地震での倒壊が放送!
#熊本地震 で、最新の耐震基準を満たした住宅がどのように倒壊したかシミュレーションで再現。広いリビングやベランダなど、家に機能性やデザイン性だけを求める消費者の指向が
地震に弱い家を生んでいることが判明しました。
「あなたの家が危ない~ #熊本地震 からの警告~」今夜9時— nhk_special (@nhk_n_sp) 2016年10月9日
NHKスペシャルでは、2000年基準で建築した最新の耐震基準を満たした
木造住宅の倒壊理由について、解き明かしています。
たしかに、広いリビングをPRする、
「広々リビング」というキャッチコピーは
よくチラシで見かけるフレーズです。
熊本地震での木造住宅の倒壊率は?
耐震基準というのは、3つに分けることができます。
- 1981年6月より前に建築された旧耐震基準の家
- 1981年6月~2000年5月の新耐震基準
- 2000年6月以降の最新の新耐震基準
熊本地震では、
1の旧耐震基準については、倒壊率が非常に高かったことは
知られています。
2の新耐震基準の木造住宅の倒壊率は約9.1%(73棟)
3の2000年基準の木造住宅の倒壊率は約2.9%(7棟)
という調査結果があります。
やはり、新耐震基準の中でも、2000年基準の
住宅は地震には比較的強かったと言えるでしょう。
2000年基準の新耐震木造住宅がなぜ倒壊?
という本が、熊本地震をうけて、日経ホームビルダーから
出版されました。
この本の目次からも、2000年基準でも倒壊してしまった
理由が分かります。
「なぜ新耐震住宅は倒れたか 変わる家づくりの常識」の目次
【 目 次 】
PART 1 熊本地震の被害の特徴住宅被害は16万棟超
被災地の住宅57棟を踏査 ほか
PART 2 倒壊の原因を徹底分析
阪神を上回る破壊力
壁位置の上下不ぞろいが弱点に
見えてきた崩壊プロセス
PART 3 危ない新耐震住宅
65%が接合部に問題あり
曖昧さが奪った耐震性能
PART 4 顧客と実務者の本音
築浅顧客に拡大する耐震不安
半壊が地震後居住の分かれ目
PART 5 実験で分かる住宅の壊れ方
耐力壁が少ない家の壊れ方
筋かい耐力壁に潜む危うさ
PART 6 危ない筋かい
角度が急な筋かいの強度は?
断面欠損で筋かいの強度は?
PART 7 危ない軸組
1階だけの補強は危険?
引き抜きと偏心、優先は?
接合がいい加減な増築リスク ほか
出典:なぜ新耐震住宅は倒れたか 変わる家づくりの常識 日経ホームビルダー 編
以上のような内容で、新耐震基準の住宅が倒壊した
理由を説明しています。
建築の素人でも理解できる内容になっているので、
マイホーム取得予定がある方は、
不動産屋やハウスメーカー任せにすることなく、
一読をお薦めします。
また、住宅に係る建築、不動産、金融関係のプロの方にも
今後の住宅について考えるうえで、
非常に参考になる1冊です。
なぜ新耐震基準の木造住宅は倒れたか?国の調査結果とは?
益城町で崩壊してしまった木造住宅を調査した結果として、
筋かいの端部にある接合部分の仕様が
不十分であることが分かりました。
筋交いの接合部分が、くぎ打ち程度のもので、
金物が使われてない住宅があったり、
金物を使って施工されていても、
長さが不足していたものが倒壊しているという
ことが分かっています。
ハウスメーカーの設計、施工力が
非常に重要であることが分かります。
接合部分に問題がなかった住宅の倒壊理由とは?
2000年基準を満たしながらも倒壊理由は、
接合部分に問題がない物件では、
次のような原因がありました。
- 軟弱地盤など地盤に問題があった住宅
- 隣の家との衝突で倒壊した家
- シロアリ被害による劣化が原因で倒壊した家
シロアリについては、
⇒阪神大震災の教訓、シロアリ被害が原因で倒壊しない住宅選びとは?
をご参照ください。
以上のように明確に説明できる原因がある物件もありましたが、
ごくわずかな住宅では、
家の問題というよりも、
断層の影響が大きく、局所的な大きな揺れがあったことが
原因してしまった物件もあります。
その意味では、家を選ぶ前に土地選びは軟弱地盤や
断層を避けるという選択も大切になります。
⇒地震に強い土地を探すには地名で液状化しやすい軟弱地盤を避ける!
もご参照ください。
広いリビングは地震に弱い?
という本の、
「耐力壁が少ない家の壊れ方」という目次にあるように、
広いリビングというのは、壁の量が減るので、
耐震性を維持するのが難しくなります。
「高い耐震性」と「広いリビング」というのは、
対立関係にあるともいえるのです。
建売物件には、リビングが30帖の物件はありませんが、
注文建築なら可能です。
耐震性を考慮しながら、希望をかなえるように
することが必要になります。
鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)の
建物は木造住宅の約4分の1の倒壊率である点も
考慮するべきでしょう。
鉄骨造の大手ハウスメーカーは?
参考までですが、木造以外に、S造(鉄骨)で建築しているハウスメーカーは
次の通りです。
積水ハウス
セキスイハイム(積水化学)
ヘーベルハウス(旭化成ホームズ)
トヨタホーム
パナホーム
大和ハウス
S造は、超広いリビングが欲しい時など、耐震性が落ちる弱点を
補える場合もあります。
具体的に、多くのハウスメーカーを比較検討する上で、
ハウスメーカー選びの本でまずは業界の研究をしてみましょう。
その上で、各社の耐震性能を比較してみてはいかがでしょうか?