秋田県湯沢市雄勝地区の国道沿い。かつて地域住民の生活を支えていた「ツルハドラッグ雄勝こまち店」の建物が完全に解体され、現在はただの広大な更地になってしまいました。
毎日見ていた景色から突然建物が消え、ポッカリと空いた空間を見て「寂しいな…」と感じている地元の方も多いのではないでしょうか。
しかし、この1店舗の閉店・解体の裏側には、「日本のドラッグストア業界を揺るがす巨大な経営戦略」と、すぐ近くにあるライバル店「薬王堂」の恐るべき戦略が隠されていました。
今回は、地元民の視点から、この閉店劇の「本当の理由」を経済の裏側とともに紐解きます。
1. ツルハとウエルシアの経営統合がもたらした「不採算店舗のリストラ」
まず、時計の針を少し戻してみましょう。ツルハドラッグ雄勝こまち店が閉店を発表した時期、日本のビジネス界である巨大なニュースが流れました。
それが、「ツルハホールディングス」と「ウエルシアホールディングス」の経営統合(2027年完了予定)です。
業界1位と2位が手を組むという、まさにドラッグストア界の「巨大戦艦」の誕生。この統合に向けて、ツルハグループが全国で一斉に進めたのが「不採算店舗の徹底的な整理(リストラ)」でした。
利益率が低い店舗や、近くのライバルに競り負けている店舗を容赦なく閉店していく——。その淘汰の波の中で、悲しくも「白羽の矢」が立ってしまったのが、この雄勝こまち店だったのです。
2. 好立地に見えて…明暗を分けたミクロの敗因は「駐車場」だった
「でも、あそこは国道沿いで目立つし、良い立地だったのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、車社会の秋田において、雄勝こまち店には致命的な弱点がありました。それが「駐車場の狭さと出入りのしやすさ」です。
どれだけ交通量が多い国道沿いであっても、駐車場が狭くて停めにくく、道路に出入りしづらいだけで、日常使いのハードルは跳ね上がってしまいます。ツルハは「巨大な戦車」のようなビジネスモデルゆえに、一定以上の高い売上を維持できなければ店舗を維持できません。現場のリアルな使い勝手の悪さが、じわじわと売上を蝕んでいったのです。
最強の隣人「セブンイレブン」を味方につけた薬王堂
対して、すぐ近くにあるライバル「薬王堂」はどうでしょうか?現在でも駐車場は常に車でいっぱいで、大繁盛しています。
この明暗を分けた最大の理由は、敷地の構造にあります。薬王堂は同じ敷地内に「セブンイレブン」があり、広大な共同駐車場を備えています。
「1回の駐車で、薬王堂の日用品と、セブンのコーヒーやATMの用事が一気に済む」「駐車場が広々していて入りやすい」という強力な相乗効果(シナジー)により、地元の顧客は完全に薬王堂へと流れていきました。集客力の差は、誰の目にも明らかだったのです。
3. 建物解体、そして更地へ。「創意工夫」で地域を延命することはできなかったのか?
ツルハの建物が取り壊され、ただの更地になっていく光景を見つめながら、私は強い口惜しさと、ある「可能性」を感じていました。
あの大きな建物と、国道沿いという立地。
人口が減り続ける過疎の田舎であっても、公共交通機関が乏しいこの地域において、生活の足である「車」のニーズは今後も絶対に無くなりません。
人口が減り続ける過疎の田舎であっても、公共交通機関が乏しいこの地域において、生活の足である「車」のニーズは今後も絶対に無くなりません。
実際、同じ通り沿いには個人の自動車整備工場や中古車販売店がすでに2店舗あります。しかし、だからこそ「工夫次第で、若干ジャンルを変えて、あの旧ツルハの建物を賢く使いこなせる業者が現れてもおかしくなかったはずだ」と思うのです。
たとえば、高齢者のための「福祉車両・軽自動車に特化した専門店」や、国道を通るドライバー・移住者をターゲットにした「アウトドア車専門のカスタムショップ」など、やりようはあったはずです。
これだけのポテンシャルがあった場所が、何の工夫もなく、ただの四角い「更地」に戻されてしまった。その現実を前に、私は「この地域には、もう新しい一歩を踏み出す創意工夫の力すら残っていないのか」と、暗澹たる気持ちにならざるを得ませんでした。
4. 人口減少率全国1位の秋田。その県境「雄勝」にこそ必要なビジネス
秋田県は人口の減少率が全国1位という過酷な現実の最前線にいます。その中でも、山形県・宮城県の両方と接するこの雄勝地域は、文字通り「人がいなくなっていくこと」が分かりきっている場所です。
だからこそ、私は綺麗事ではない、その減少の歯止めとなるような泥臭いビジネスが欲しかった。
いまさら、この地域を昔のように大爆発させて盛り上げることは不可能かもしれません。しかし、「誰かの創意工夫」によって新しい仕事や空間が生まれれば、それは地域を輝かせなくとも、確実な「延命措置」にはなったはずなのです。
今回の薬王堂の「田舎戦略(大手が撤退した後のインフラを独占して生き残るスタイル)」は見事ですが、ツルハの跡地が更地になってしまったことは、地域の「知恵と挑戦の機会」がまた1つ失われたことを意味しています。
5. まとめ:私たちはこの更地に、次の「知恵」を打てるか
ただの更地は、地方ビジネスの戦場跡であり、いまの地方が抱える「思考停止」の縮図でもあります。
このまま何も植えられない土地として終わるのか、あるいは、この過酷な県境の町で「次の一手」を仕掛けるチャレンジャーが現れるのか。
利便性だけを追う大企業が去ったあとの大空地を、私たち地元住民はどのような目で見つめていくべきなのか。これからも、この街の未来の輪郭を追い続けていきたいと思います。
みなさんは、このツルハ跡地にどんなお店や工夫があれば、地域が延命できたと思いますか?ぜひコメント欄やSNSでご意見を教えてください!
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